更年期がほうれい線や肌に与える影響
女性であれば避けようがない更年期。40歳を過ぎたあたりから生理不順になったり無月経になる人が増え始め、50代半ばくらいにはほとんどの人が閉経を迎えます。
この時期は女性ホルモンが急激に減ることもあって心身に大きな変化が訪れます。身体的な影響としてはホッとフラッシュに代表される「ほてり」や「のぼせ」、動悸や頭痛、めまいなど。個人差はあれど更年期障害は非常につらいものです。
しかし、女性であればそういった症状と併せて美容への影響も気になるのでは?
更年期と時を同じくしてシワやほうれい線が一気に出てきたという話も聞きます。実際更年期は美容面にどういった影響があるのでしょうか?
女性ホルモンが激減する更年期
女性らしい体を作りだす女性ホルモンの分泌は20代半ばをピークに減少に転じます。40歳くらいまでは比較的緩やかに減少するものの、更年期に差し掛かると勢いが増し急減する傾向に。
女性ホルモンはエストロゲンとプロゲステロンの2種類があり、美容面で特に重要になるのがエストロゲン。女性の命ともいえる肌や髪を美しく保つ作用があるからです。
そんなエストロゲンが急減する更年期。憎きほうれい線やシワ、たるみなどに影響してくると考えるの自然ですよね。
更年期が美容に与える悪影響
では更年期に差し掛かりエストロゲンが減ってくると、美容面に対し具体的にどういった悪影響が出てくるのか見てみます。
考えられるのは以下のようなもの。
- 真皮のコラーゲンが減少し肌のハリや弾力がなくなる
- 肌の乾燥
- 薄毛・抜け毛の増加
- ヒゲや体毛が濃くなる
ひとつずつ見ていきましょう。
肌のハリや弾力がなくなる
代表的な女性ホルモンであるエストロゲンには真皮内にある線維芽細胞の受容体と結合しコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を産出する働きがあります。
表皮の下にある真皮層は肌に弾力やハリをもたらす重要な部分。そしてこの弾力やハリはコラーゲンとエラスチンが網目状に張り巡らされることによって生まれているのです。
エストロゲンが減少しコラーゲンやエラスチンの生成が滞ると肌の弾力やハリを維持できなくなり、見た目年齢を大きく引き上げるたるみやほうれい線、深いシワとなって現れてきます。
更年期なると一気に老け込む女性が多い一番の理由はコラーゲンやエラスチンの減少によるものと見ていいでしょう。
肌の乾燥
エストロゲンが減少することにより線維芽細胞から生成される量が減るのはコラーゲンやエラスチンだけではありません。ヒアルロン酸も減少します。
このヒアルロン酸は非常に高い保水力を持ち、真皮内でコラーゲンやエラスチンの隙間を埋めるように満たされています。瑞々しい女性の肌はこのヒアルロン酸によってもたらされているのです。
しかしヒアルロン酸の生成が減少すると、肌が保持する水分量も減ることになり、それは乾燥という形で現れてきます。
乾燥することによって肌はガサガサになりやすく、また細かいちりめんジワも増えてくるでしょう。口と頬の境界線に沿ってちりめんジワができればほうれい線が深くなる原因にも。
一般的に肌の乾燥というのは表皮のものを指し、軽度であれば保湿ケアで回復します。しかし更年期による乾燥は真皮層からもたらされるもの。それだけに真皮のダメージや衰えも気になるところです。
薄毛・抜け毛の増加
エストロゲンは女性らしい艶やかで美しい髪の毛を生やす作用があり、これが減少すると抜け毛が多くなる傾向に。これが酷くなると女性であっても薄毛になってしまう可能性があります。
実はこのメカニズム、男性の薄毛とほとんど一緒という事実が。
男性の薄毛として代表的な男性型脱毛症(AGA)というのはジヒドロテストステロン(DHT)という強力な男性ホルモンによって引き起こされます。
女性も少量ながらテストステロンやDHTなどの男性ホルモンを分泌しています。女性ホルモンであるエストロゲンはDHTの生成を抑制したり髪の毛の成長を促したりする作用がありますが、これが減少すると相対的にDHTが増えてしまうのです。
結果DHTによって抜け毛が増え、薄毛になってしまうという仕組み。更年期以降の女性に薄毛が多くなるのはこれが理由。
ヒゲや体毛が濃くなる
更年期になるとヒゲや体毛が濃くなったと感じる人が多くなります。
これはメカニズム的には薄毛と同様。女性ホルモンが減りヒゲや体毛を生やす作用がある男性ホルモンが相対的に増えると、ヒゲや体毛が濃くなる可能性があるのです。
「髪の毛は薄くなるのにヒゲや体毛は濃くなるの?」と感じる人もいるでしょう。
DHTは髪の毛に対しては脱毛という形で作用する一方、ヒゲや体毛に対しては生やす作用があるのです。男性が年齢と共に髪が薄くなる反面ヒゲや体毛が濃くなるのはこういったことが理由。
更年期がほうれい線を悪化させる理由
女性が更年期に差し掛かると、ほうれい線が一気に悪化する恐れがあります。
その理由は上でも書いたように、エストロゲンが減少することによってコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を作り出す力が弱まるから。
ほうれい線というのは一見すると深いシワのような印象を受けますが、実際は頬と口の境界にある溝。どんなに若い人でも笑えばほうれい線が出るように、誰にでも存在しているのです。
そしてこのほうれい線が悪化してしまう一番の理由は頬のたるみ。
更年期によってエストロゲンが減少すると、コラーゲンやエラスチンを生成する力が落ち、結果肌の弾力やハリが失われていきます。すると頬が重力に負け下がってくることに。
落ちた頬は口との境界線である鼻唇溝の上に乗るような形に。それこそがほうれい線悪化のメカニズムなのです。
加齢によって肌が衰えいているところに更年期…これは厳しい。
効果的な更年期対策とは
更年期による頬のたるみやほうれい線、シワ対策はどうすればいいのか?
日頃のスキンケアをしっかりと行うという大前提のもと、特に重要になるのは紫外線対策。「そんなの年齢かかわらず重要だろ」と感じる人もいるかもしれませんが、若い人以上に気を使う必要があるのです。
更年期以降は紫外線対策がより重要に
卵巣から分泌されるエストロゲンは20代をピークに減少に転じます。そうすると真皮内の線維芽細胞はそれを補おうとエストロゲンを産出するようになるとされます。つまり卵巣の分泌低下を線維芽細胞が補っている形に。
しかし、線維芽細胞が真皮にまで到達する紫外線A波(UVA)を浴びるとエストロゲンと結びついてコラーゲンやエラスチンの生成を促すエストロゲン受容体が減少してしまうことを確認。
減ってしまった女性ホルモンを補おうと線維芽細胞がエストロゲンを作り出しても、紫外線を浴びることでその作用が無駄になりかねないのです。
少なくなってしまったエストロゲンを少しでも無駄にしないためには、紫外線に対し20代30代の頃より厳重な警戒が必要になります。
積極的なイソフラボン摂取
ご存知の方も多いと思いますが、大豆に多く含まれるイソフラボンはエストロゲンに非常に近い働きをするため、エストロゲンの急減によって引き起こされる更年期障害の軽減に役立ちます。
それは美容面に関しても同様。
減少してしまったエストロゲンの代わりに線維芽細胞に働きかけコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の産出を促す作用が。となれば、ほうれい線に対する効果も期待できますよね。
日本においてイソフラボンの1日の上限摂取量は70~75mgとされています。上限とはいっても、これを超えたからといって目に見えた問題が出るわけではありません。これ以上の摂取を長期間にわたって続けた場合、何らかの弊害が出る可能性も否定できないというレベルの話。
この上限摂取量分のイソフラボンを摂取するには納豆2パック、もしくは豆腐1丁(300g)で届くことに。毎日納豆1パックとみそ汁など豆腐料理を食べていれば十分な量が簡単に摂取できるのが強みでもあります。
更年期が近づいてきた、すでになっているという人は摂り過ぎないレベルでイソフラボンを積極的に摂取するようにしましょう。
更年期とほうれい線との付き合い方
女性ホルモンが激減する更年期になると、少なからず美容面への影響が出てきます。特にコラーゲンやエラスチンなどが減ってしまうことによって表面化する肌のたるみやほうれい線、シワは深刻な問題。
ただ、エイジングケアや紫外線対策などでカバーすることは重要ですが、過度に神経質になる必要はないのかなとも感じます。
それでなくとも更年期には心のバランスも乱れがち。そんな状況で美容に固執しストレスを溜めることはかえって逆効果になる気がするからです。
そう、更年期というのは絶対に避けようがないものですし、女性であれば等しく訪れるもの。何も特別なことではないのです。無理に逆らうのではなく、それを受け入れた上でできることを無理のない範囲で実行するべき。
そんなに難しいことではありません。
これまでよりちょっと良い化粧下地や美容液を使う、豆腐や納豆を積極的に食べる。そういった意識を持っているだけでも今後に良い影響を与えるはず。
女性である以上死ぬまで美しさにこだわりたいもの。その中でほうれい線の存在は大きな障害になるでしょう。しかし常識的に考えて更年期以降にほうれい線を消すことなど美容整形でも行わない限り厳しいのが実情。
更年期に差し掛かったら、「加齢による影響を食い止めたい」「ちょっと改善させたい」という意識を持ちつつも、20代30代とは違う美の在り方を考えてみてはいかがでしょうか。
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